numero 32
ラルド Lardo



 「当時の先端技術者「石工」がギリシャからここに移住してきた時にラルドの歴史は始まりました。」当時とはなんと2000年以上前の話。ラルド作りはそれ以来延々と受け継がれてきているのです。場所はトスカーナ州の北部にあるコロンナータです。
 海沿いに走る高速道路からも、この地方に入ると山のあちこちがすっぱりと切られ、その断面が白く輝いているのが見えます。それが大理石の採掘場で、近くにはそのものずばりマルモ (大理石) という地名もあるほどです。コロンナータは、そこからさらに街中を通り、山の中の道をうねうねとどこまでも登り、やがて見えてくる山の頂が削り取られている所にあります。村自体は小さなもので、横断しても数分しかかからない広さです。しかし車を止めた広場から始まって、村中にラルドの看板のなんと多いこと。
 ラルドは豚の背脂の塩漬けで、イタリア中で豚肉加工をしている所ならば必ず作られているものですが、いちばん有名なのがここコロンナータの物。その第一の秘密は大理石にありあます。第ニの秘密は地形と、そしてそれぞれの生産者が塩に混ぜる香辛料となります。説明をしてくれたラルド協会会長の話では、重労働をしていた紀元前のギリシャ人石工たちが大理石の箱を作って、自分たちのエネルギー源として豚の背脂の塩漬けを漬け込んだことがここのラルドの起源とか。
 実際に作り方を見てみると、長さ1メートル、幅70センチ、深さ90センチの大理石の箱に、10センチはあるような厚手のラルドを30〜40センチ角に切ったもの、野生のウイキョウの葉やニンニク、ローズマリーなどの香草類、シナモンなどを混ぜた香辛料を粗塩と交互に重ねます。浸けこみ期間は6か月。
 すでに出来上がったものの蓋を開けると不思議なことに茶色の塩水に浸かっています。ラルドの脂分からはこんなに水が出るはずがないのですが、何故なのでしょうか。ここに第二の秘密がありました。コロンナータは山の上にありますが、遮るものなく海からの湿気を含んだ風が届くため、その湿気が塩をとかすのです。
 出来あがったラルドは、薄く切って熱々のトーストパンに乗せたり、太めのグリッシーニに巻きつけたりして食べますが、乳鉢ですりつぶしてペースト状にした物をパンに塗りつけたのを、ここで初めて見ました。
 脂の塊なのに、口に含んでもすっきりとした後味。
 コロンナータのラルドだから出来るのでしょうか。
 コロンナータのラルドをたっぷりと食べた後に、次の昼食の場所へと移動する研修生たち。食卓に着く前に眠くなってしまったようで、バスの中が静まり返っているのは、決して石切り場の絶景に感動しただけではないようです。

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