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バター Burro
アスパラガスにバターで風味をつけているのを見たジュリアス・シーザーが「バターを食べるなんて、何と気持ちの悪い」と言ったとか。古代ローマ人にとってバターは傷を治す軟膏だったそうですから、それが料理に使われているのを見て、奇妙に思えたのも仕方がありません。しかし、現在ではバターもイタリア料理の中の―地域が限られているとはいえ―重要な食材の一つになっています。
バターは、牛乳の中の脂肪分を攪拌して作られます。今は遠心分離機にかけて乳脂肪分 (生クリーム) を取り出していますが、昔は牛乳の表面に浮かんでくるものをすくい取ってザンゴラと呼ばれる攪拌機にかけ、固まったものを型に入れて作っていました。イタリア郷土料理の第一の条件は「その土地の食材で作られている」ことです。バターの材料は牛乳。ということはバターを食材として使っている地方は、主に牛が飼われている地域ということになります。イタリアの家畜分布図では、伝統的に中南部イタリアでは羊を、北イタリアでは主に牛を飼っていました。それは食肉用ではなくチーズ生産のためなので、当然中南部では羊乳製チーズ、北部は牛乳製チーズが作られる事になります。そのためバターもまた北イタリアの生産品ということになるのです。もちろん他の動物の乳でもバターは作られますが、その場合は「〜のバター」と、動物の名前をつけなければいけない規則になっています。
バターと言えばフランス料理の食材で、イタリアでは影が薄いような気がしますが、温暖な気候を好むオリーヴが育たない地域、特に北イタリア、アルプス地方の料理に無くてはならないものです。焦げやすいバターを料理に使う時には、一度温めて冷まし、その上澄みの部分だけを取り出した“ブッロ・キアリフィカートBurro chiarificato”にするという工夫もされていました。包装されたバターしか見たことのない研修生が、初めて手作りバターを見た時の事です。週末に土地の牛飼いたちが共同で持っているチーズ工房に行った折、建物の中に入ると台の上に白っぽいクリーム色をした塊が置かれているのを発見。どうやらチーズではなさそうですが、これがバターであるという確信が持てません。扱っている職人さんの指先がつやつやと光っています。塊はかなりやわらかく、ちょうど溶けたてのアイスクリームのよう。それを器用にまとめると、大きな型の中に入れ、紙の上にひっくり返します。すると表面にきれいなエーデルワイスの花模様がついたバターの出来上がりです。 「バターは水分が18%以下でなくてはいけないから、うちで作っているものは水分が多すぎてバターと呼んではいけないんだよ。でも殺菌するために牛乳を温めていないので風味が良いって、いつも売り切れさ」と、この時はすべて予約済みで味見をすることもできず。 もちろん、日を改めてバターを買いに行ったことは言うまでもありません。食べた感想は「口の中で溶けた時の香りが今まで知っているどんなバターとも違っていて、バターを心底使ってみたくなった」そうです。 |
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