numero 27
レンズ豆 Lenticchie



 中部イタリア、ウンブリア州は紀元前にウンブリとういう民族が住んでいたので、ウンブリア‐ウンブリの土地いう地名がついたと言われています。またそのほとんどが丘陵地帯にあり、高台から見渡すと山の影がどこまでも続いて見えることから、オンブラ‐影という意味も含まれているとか。
 ウンブリアの特産品の中に、加工肉と黒トリュフに混ざって、ちょっと地味なレンズ豆があります。レンズ豆は食材としての豆の中では最古参で、紀元前7000年からすでに食べられていたという、歴史的な存在です。
 ではなぜレンズなどという近代の発明品の名前がついているのでしょうか。「形が似ているから。」そう、その通り。でも、レンズからレンズ豆の名前がついたのではなく、レンズ豆に似ているのでレンズという名前がつけられたそうです。年代から考えてみれば当然の話ですが。
 さてこのレンズ豆の有名産地がウンブリアにあります。場所はカステッルッチョ。行くためには、整備された道路もないので、起点となるノルチャから山の中腹をウロウロとまわりまわって1時間ほどかかります。到着してみると壮大な景色が目の前に開け、季節によっては、この世のものとは思えないようなお花畑が一面に広がります。赤はヒナゲシ、紫はスイトピー、白はマーガレット、そして黄色はレンズ豆の花。
 丘の頂にあるカステッルッチョは、端から端まで歩いてもわずか2〜3分しかかからない小さな村で、おまけに標高1500メートルの地にあるので、住むには過酷な場所です。人々はわざわざこの地を選んで住んだのではく、中世にローマ法王が街道の中継地を作るために、政治犯たちを送ったのが起源だとされています。生きるために必要な農作物はなかなか育たず、ようやく安定した生産にこぎつけたのがレンズ豆でした。厳しい条件の下に生産されたレンズ豆は、平地のものよりもずっと小さく、色もバラバラです。しかし、高地で害虫が発生しないため農薬を使う必要が無く、なによりも寒さに耐えぬいたカステッルッチョのレンズ豆は、皮が柔らかく滋味深い味に育っています。
 狭い土地なので量産は出来ず、大々的に売り出す品揃えも力量も無いのが残念ですが、反対に幻の食材として名前は高まるばかり。遠く離れると、まず手に入れることは出来ません。
 研修生はまだこの地を踏んだ事はありませんが、カステッルッチョのレンズ豆を食べて、何気ない食材の美味しさを知り、イタリア食材の奥深さにため息をつくのでした。

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