|
||||||||||
|
|
||||||||||
|
|
|
|
|
パーネ カラザウ Pane carasau
灰色の丘陵が視界の果てまで続いています。岩肌が見えて、所々に大地にしがみついているような潅木の緑があり、その向こうに光っているのは海でしょうか。サルデーニャの朝は「壮大」という言葉がぴったりです。同じ丘陵地帯といっても、トスカーナやウンブリアのような優しさはなく、孤高の自然が太古から変わらずに存在している、そんな感じを受けます。 イタリアのもうひとつの島シチリアとは違って、サルデーニャは人を寄せつけない島でした。地中海を舞台とした交易が盛んだった古代からサルデーニャには港がありましたが、航海者たちは島に入ることを目的地にするのではなく、遠方に行くための寄港地として使うばかりでした。住人たちも海の向こうから来るのは侵略者だと恐れるばかりで、ひたすら内陸に目を向けていたとか。 そんなサルデーニャ人たちの生業は羊飼い。いまでもイタリアには、長い間放牧をしながら旅をする人たちがいます。昔ながらに杖を持ち、犬を従えて、羊とともに寝起きしながら移動する人々です。長旅をする彼らが持って行くのはこの島だけにあるパン、「パーネ・カラザウ」です。
パンは私たちのご飯のように西欧社会の食の基本です。しかし毎日柔らかいパンが食べられるようになったのは、ほんのここ数十年のことで、ほとんどの人が週に一度、地方によっては一年に一度しかパンを焼くことが出来なかったのです。硬くなったパンをかじったら、それこそ歯が折れてしまうでしょう。固いパンでも台所にいればスープに入れて柔らかくしたり、パン粉にして料理できますが、長いこと家を留守にする羊飼いには無理なこと。そこで作り出されたのが、パーネ・カラザウなのです。研修生は早朝からこの不思議なパンを見に行きました。場所はサルデーニャ東部ヌオーロ近く。見学先のパン工房では息子たちが下準備をして、薪釜の前にどっしりと構えているマンマの所に運びます。
作り方は、硬質小麦をよくこねて延ばし、二枚重ねて円形に型抜きします。3時間ほど寝かせてからそれを800度の薪釜に入れると一瞬の間にボールのように膨らみます。ここで長いこと入れっぱなしにしてしまうと簡単に焦げてしまうので、すぐに取り出します。すると外の冷たい空気に触れてボールはすぐにしぼみ、二枚の薄いクラッカーのようなものが出来上がります。売っている時はこれを一枚ずつはがして、重ねてあります。このパンは薄いので日にちが経って硬くなっても、パリンと割れ、歯に負担もかかりません。まさに羊飼いのために作られたパンなのです。 この家族の作っているパーネ・カラザウを食べて、研修生たちは羊飼いの生活に思いをはせたのでした。 |
|
|
|
|
||
|
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||