numero 23
キャベツ Cavolo



 薄暗がりの中に、腰に届きそうな巨大な野菜が見えます。とがった先端を周りの葉が幾重にも包み込むような、それはキャベツ (!)。
 場所はアルト・アディジェ州、オーストリアとの国境ちかくです。人々はイタリア語とドイツ語の両方をつかいますが、そのイタリア語の聞き取りにくいことといったら、まるで外国 (?) に来てしまったような気さえします。しかもこの地方の呼び名は“南チロル”、オーストリアに影響されている所です。
 取材でこの地を訪れたのは、キャベツを見るためでした。もちろんイタリア全土でキャベツとその仲間の野菜を見ることができますが、野菜の郷土性を探るには、その土地にどれだけ必要とされているかというのをまず知らなくてはなりません。平野でいろいろな野菜を他の地方に売るために作っているのならば、郷土料理に関わる率が少なくなります。もしそれしか採れない土地であるのならば、当然郷土料理へのかかわりも深くなるはずです。
 アルト・アディジェを選んだのは、この地方にサワークラウトがあるからです。ドイツの食材として有名なサワークラウトはキャベツを発酵させた保存食で、越冬の必須アイテム、新鮮な野菜に何ヶ月もお目にかかれない冬の間のビタミン補給に欠かすことのできないものです。また山の中の土地なので栽培される野菜も限られ、その面からもキャベツはとても重要なものなのです。
 
 訪問先の農家の裏庭には、キャベツ、葉の縮れた縮緬キャベツ、紫キャベツに芽キャベツ、Cavolo cinese 中国キャベツと呼ばれる白菜、コールラビなどキャベツ一族が勢ぞろいしていました。
 クラウティに使われるのはカップッチョと呼ばれる、日本のキャベツをふた周りほど大きくしたものです。それにしてもスライスしたクラウティを入れる木桶の大きいこと。自宅のバスタブの2倍はありそうです。その上にスライサーを乗せて、巨大鰹節削のように、シャカシャカとキャベツを前後させてスライスします。次に塩と混ぜて専用のカメに入れ、白ワインをふりかけて密閉、1ヶ月経つと発酵して酸味が増し食べられるようになります。
 クラウティ煮込み料理に添えたり、生地に包み込んで揚げたり、そのまま食べるだけではなく料理にもよく使われています。
 薄暗がりで見た巨大キャベツから小さな芽キャベツまで、キャベツの種類というのは本当に多いものです。
 寒冷地アルト・アディジェはまさにキャベツ王国。この地に研修に来た研修生は、新しいキャベツ文化を日本に持って帰るのでしょう。

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