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チョコレート Cioccolato
シチリア島の東部にモディカという街があります。観光ならばすぐ隣にあるラグーザの方が有名ですが、この街に行くのには素敵な目的があるのです。ひとつは民衆伝統博物館に行くこと、もうひとつはここにしかないお菓子屋さんを訪れることです。 民衆伝統博物館は、自分たちのルーツを大切にするイタリア人らしく、内部の部屋に昔の厨房などを移築して保存してあるものです。例えば農家の台所、薪を使う原始的なオーブンと粗末な道具類が飾られています。別の部屋には蜂飼いの庭が再現されて、竹に似た葦の筒を牛糞でかためた巣箱が並んでいます。次の部屋に行ってみましょう。そこの台の上にはシチリアの郷土菓子フルッタ・マルトラーナの型と彩色する筆が数本、台の下にはおかしな形の石がおいてあります。それははるばる南米から持ってきたカカオをすりつぶす道具です。 さて、もう一箇所の訪問地はこの菓子工房の元の持ち主であった“ドルチェリア・ブオナユート”。この菓子店が有名なのは、他には無いチョコレートの原型が見られるからです。
チョコレートはその昔のメキシコ、アステカ文明期の発明品で、カカオ豆とバニラ、コショウ、唐辛子、ハチミツをすりつぶし、水でのばしたものを食後に飲んでいました。スペイン人たちは辛味を嫌い、バニラと砂糖を加えた飲料を作り、続いてイギリス人が牛乳に溶かした今のココアに近い形を作り出しました。それが板状になったのはもっと時間が下ってからの話です。ちなみにイタリアではココアのことを“チョッコラータ”チョコレートのことを“チョッコラート”と呼びます。ここブオナユートのチョコレートは、食べるとジャリッと砂糖の結晶が歯に当たるという特徴があります。オーナー曰く、最高品質と言われるアフリカ、サオトメ島のカカオ豆の風味を変えないように、また砂糖が溶けないように加熱を最低限に抑えてつくるのだとか。 聞けば、オーナーのルータさんのご先祖は、16世紀にスペインからチョコレート職人としてこの地に渡ってきたのだそうです。延々300年以上もの時をひたすらチョコレートに捧げてきたこの店は、現在イタリアのあちこちの雑誌で紹介される有名店でもあります。 今までに見たことも食べた経験もないチョコレート製造を目にした研修生たちは、イタリアの食の奥深さを感じ、すぐにこの菓子店のオーナーであるフランコ・ルータさんとの記念写真撮影に列を作りました。心の中で、イタリアのチョコレート史にホンの少し参加したような満足感を抱きながら。 |
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