numero 16
栗 Castagna e Marrone



 大地の恵みを育て収穫した時、人々は苦労を分かち合った友と一緒に喜び、お祝いをします。それが収穫祭、イタリアでは一年中どこかで開かれています。
 秋から冬にかけての収穫祭はワインと、そして栗でしょう。ワインはイタリア全土で行われていますが、栗のほうは特に山と深く結びついています。それは栗が、野菜や小麦の採れない山の中で、冬を越えるための唯一の主食だったからです。同じ山といってもアルプス地方ではトウモロコシの粉で作ったポレンタが中心で栗のほうはイタリア半島の中央を走るアペニン山脈となります。
 イタリアの栗を大別するとカスターニャとマッローネの2種類になります。カスターニャはイガの中に大体3粒入っていて、両方もしくは片面が平らです。色は濃い茶色、渋皮は深く果肉に入り込み除くのが大変です。一方マッローネは大粒で、中央の実が両側を押しつぶし丸くなっています。色は茶色、たてに薄く筋が入っています。渋皮もカスターニャに比べて簡単に取れ、味も甘味が強いものです。
 マッローネを使ったマロングラッセのように栗の利用法というとお菓子を思い出しますが、前述のように主食として使っていた地方では、まず新鮮なうちはローストに、そして残りは乾燥させて勝ち栗に、さらには粉にして保存し、料理に使っていました。勝ち栗はミネストラや米と合わせてリゾットに、でも応用範囲が広いのは粉のほうでした。煮込んでポレンタにしたり、パンを作ったり、もっと手をかければニョッキやパスタも作れるのです。もともとは貧しい山の料理だったはずが、いまではかえって、季節感のあるご馳走になってしまったようです。
 研修生のイタリアの栗との出会いは、授業を行うドモドッソラの裏手の丘を散歩する時でした。息を弾ませながら長い坂を上っていくと、途中に小さな栗がたくさん落ちています。「貧弱な栗だなあ」とバカにしながらも、促されて皮をむき食べてびっくり。「なんて濃い味なんだ。それにこの甘さ。旨いよ」
 次に出会うのはパスタの授業で手打ちパスタを作った時。テーブルの上には小麦粉、硬質小麦粉の小麦類に混ざって、そば粉や栗の粉も乗っています。物によっては卵を、他には牛乳や水も使ってこね合わせ、伝統的な料理を作るのです。
 ある日偶然手に入れたのが、ガルファニャーノ産の栗粉。イタリアで、いつも食べている栗の粉に比べ、それは薫り高く甘く、まるで別のもののようでした。上には上があるものです。本当に奥が深く、食材探求にはいくら時間があっても足りないほどです。

HOME

 


ict食文化企画有限会社
E-mail:apicio@ict-ict.com