numero 15
米 Riso



 「稲の丈は大人の胸の辺りまで。特に実って頭が重くなると倒れやすいから、嵐が来ないように祈るんですよ」
 ミラノマルペンサ空港近くは、イタリア第一の米の栽培地です。春先になると飛行機から、鏡のように水を張った水田がどこまでも続いているのが見えます。その水田を見回る回数が増えるのが9月。代表的米料理リゾットのお米として知られるカルナローリ種が実る時です。カルナローリは日本のものに比べて2倍近い大きさのお米です。そのためリゾットもアルデンテで食べるイタリア人の好みに沿って、火を止める時さえ間違わなければ、しっかりと歯応えが残り長続きします。
 そのカルナローリの背丈は大人の胸の辺りまであると聞いて、収穫期を待って出かけました。膝ほどの高さの稲が風にそよぐ田んぼの先に、カルナローリを植えた一郭がありました。しかしこの高さは何でしょう。測ってみれば根元から130センチもあります。当然先頭に実っている粒の数は、日本のものとは比べ物にならないほど少ないものでした。カルナローリの価格が高い理由が、やっと分かったような気がしました。
 お米は、諸説がありますが、7世紀から9世紀の間に香辛料としてイタリアにもたらされ、ルネッサンスの頃には珍しい食材として宮廷で盛んに使われていました。穀類として北イタリアの重要な食料として生産され始めたのが、この数百年の間。初めから主食として定着したものではないので、リゾットやサラダ以外にドルチェの材料としてもよく使われています。
 
 このようにイタリアでは、お米の調理用途がいろいろとあるので、その4種類に分けられた大きさを目安に使い分けをします。リゾットなど米の形を生かしたいものは大きめの米を使い、ミネストローネやドルチェのように形を気にしないものは、価格の安い小さめのものを用意します。
 研修生の訪れる米農場は、本場ヴェルチェッリの、あの映画「苦い米」を撮影したことでも有名なところ、どこまでも続く水田の中にポツンとある広大な建物です。農場に近づくと、事務所やそこに働く人々のアパートが敷地いっぱいに周りをとり囲み、中庭に精米所や倉庫が並ぶように建っているのが分かります。
 研修生たちは、精米法を見学してから厨房に入ります。これは農場の方から「米を扱いなれている日本人の皆さんに、是非イタリア米を使った料理を見せてほしい」との希望から出た企画です。しかし、日本の米となんと違うこと。イタリア米は固くそして水分が少ないのです。姿は同じでも味や触感がまったく違う食材を前にして、研修生たちの好奇心が頭をもたげたようです。

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