numero 14
干しブドウ Uvetta



 イタリア全土で見ることの出来る植物はブドウ。オリーヴももちろんイタリアを代表する木ですが、こちらは気候温暖な地中海に突き出した半島の部分で見られ、大陸に入った所からは極端に少なくなります。
 イタリアはヨーロッパのブドウ文化の入り口で、古代ローマを通ってワインは全土に広がりました。現在でも栽培されている物は地方毎に異なり、ワインの材料になっているものだけでも300種類を越えるといわれています。
 ワイン以外にそのブドウから作られるのが干しブドウ。一般にはスルタニーナ(サルタナ種)と呼ばれる黄緑色がかって透明感のあるものが出回っていますが、さすがはイタリア、干しブドウにも地方性があります。シチリアではコリント種と呼ばれる小豆大の黒いものがよく使われ、ヴェネト地方のウヴェッタ ビアンカ(白ブドウ)は鰯の南蛮漬け“サオール”に使われています。このようにイタリアではドルチェに使われるのはもちろんの事、料理にもよく使われているのです。他にも粒の大きいズミルネ種や種の無いマラガ種などがあり、こちらは用途に応じて使い分けられています。面白いのは、よく松の実とセットになっている事。これはアラブの影響といわれ、シチリアの市場ではすでに混ぜてあるものが売られているほどです。
 
 数ある干しブドウの中でも忘れてならないのが“ズィビッボ”。同名のリキュールもあり、両方ともシチリアの小島パンテッレリーアで育てられているマスカット種のブドウから出来ています。芳香のあるマスカット種のブドウが、乾燥していつも風の吹く熱い土地で育てられるとどうなるでしょうか―水分の少ない凝縮した果実が出来ます。それをさらに乾燥させた乾しブドウ。考えるだけでも美味しそうです。しかし当然の事、この干しブドウは生産量が少なく、他の土地ではなかなか見つける事が出来ません。
 シチリアに到着した研修生たちのテーマのひとつは、ズィビッボを見つけること。少ない時間をやりくりして、到着したのはパレルモのヴッチリーア市場です。細い路地を歩き回って・・・ありました。乾物を売っている店先に、並んでいる幾つかの干しブドウ。小さいもの、大粒のもの、枝に付いたものなど数種類。
 「ズィビッボをください」「このふたつがズィビッボだよ」大粒で濃いこげ茶色をしたもので、ひとつは枝付、もうひとつは粒だけのものです。「どう違うんですか」必死のイタリア語で質問します。「まあ味見をしてみなよ」会話が成立して嬉しい返事。
 口に入れたズィビッボは自然のものとは思えないほど甘く、飲み込んだ後に鼻腔を抜ける香りのなんと芳しいこと。思わず1キロも買ってしまい、宿に帰ってからスーツケースの重さに蒼くなった事は言うまでもありません。

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