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パン Pane
「フォルノ(オーブン)を暖めるには、剪定したケッパーの小枝を使うのが一番良いんですよ」とはパンを焼きながら説明してくれるロレンツィさんの言葉。大きな薪では一気に火力が上がりフォルノの内側表面だけしか熱くならないので、焦げやすくなってしまうそうです。その点小枝を利用すると時間がかかりますが、内側の壁の深くまで温まるので、理想的に温まり冷めるのもゆっくりだとか。 実はこの温度差が大切で、これを利用して多くの料理が作られます。まず薪が中で燃えている時は、ピッツァや厚切りの肉を焼き、中が充分に温まると燃えカスを全て取り出して発酵させたパンを焼きます。次に温度が低くなると、今度は小さく焼いたパンを半分に切ってもう一度入れ、蓋をして翌朝まで置いておきます。すると長期間保存の出来る乾パンが生まれるわけです。 ロレンツィさんのお宅では100年以上前からあるオーブンでパンを焼きます。その様子をぜひとも見たいと、シチリア島のそのまた小島に行った時のことです。今まで温度調整の出来るオーブンでしかパンを焼いたことの無かった皆がまず実感したのが、フォルノの扱いの難しさ、そして一度の加熱で色々な物をつくるという徹底した使い方。 「そう言えばイタリア郷土料理に、無駄は一切無いって聞いたことがある。これなんだ」と納得の様子。そして今度は、各地のパンの再利用に話が移りました。 昔はパンを焼くのは村中総出の大仕事でした。一度に数週間分、場所によっては半年分のパンを焼いてしまうのです。出来たての数日間を除いて、パンは当然固くなっていきます。 では、固くなったパンはどうするのでしょうか。
火であぶってニンニクをすりつけ、オリーヴ油をかけたブルスケッタ。またその上に、刻んだトマトや茹でたカリフラワーのオリーヴ油和えをのせたりすると、美味しい一品が出来上がります。チーズおろしを使ってパン粉を作れば、そこから多くの揚げもの料理が。そして、熱したオリーヴ油にニンニクとアンチョビの香りを移してパスタにからめ、炒ったパン粉をふりかけて出来るのが、香ばしい“パスタ カムーディカ−パン粉のパスタ”。南イタリアの香りがします。最も一般的なのが“パンツァネッラ”でしょうか。固くなったパンをお酢と水につけて柔らかくし、よく絞ってから、刻んだ野菜、オリーヴ油で和えて出来上がり。量が少しならば前菜に、たくさん作れば、あっさりとしたい夏の食事にぴったり。 パンはお菓子にも使えます。“パンのトルタ”では、固くなったパンを牛乳で柔らかくし、お砂糖、乾しブドウ、果物の砂糖漬けを入れて、型に入れて焼きます。冷たくして食べれば、再生料理だなんて思えないほどです。 そろそろロレンツィさんのフォルノで、パン出し作業が始まったようです。薪の香りを含んだ熱々の焼きたてパンを手にして、皆のお腹の虫も騒ぎ出しました。 その日の昼食のテーブルでは、パンかごがすぐに空っぽになったそうです。 |
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