FICTイタリア料理長期研修
研修生のいる風景 (8)


(右) 小西 達也 シェフ (FICT第10期生)
北イタリアを中心に修業し、最後はスペイン「エル・ブジ」へ。約5年間の現地修業の後、帰国後は西麻布「ゼフィーロ」、丸の内「カランドリーノ」のシェフを経てリストランテ カシーナ カナミッラへ。飄々とした雰囲気が魅力の長身色黒サーファーです。

(左) 岩坪 滋 シェフ (FICT第14期生)
ピエモンテ州「フリポー」ソレント半島の名店「トッレ・デル・サラチーノ」、その後、ヴェネト、サルデーニャ、シチリアなどのレストランで2年半にわたり修業。
帰国後は表参道「カッパス」のシェフを経て、リストランテ カシーナ カナミッラへ。明るい性格で、着実に歩みを進めるタイプ。

 今回の「研修生のいる風景」の主役は、今年、2009年11月からictが経営するリストランテ カシーナ カナミッラのシェフとなった小西 達也氏 (FICT第10期生)、岩坪 滋氏 (FICT第14期生)です。
 2TOPシェフという、新たな展開を開始したリストランテ カシーナ カナミッラ。オーナーである長本和子氏にカシーナ カナミッラという舞台について、そして新シェフのおふたりには、これからの抱負とFICT研修時代について大いに語っていただきました。
 
カシーナ カナミッラという舞台について

--まず最初に、長本さんに、カシーナ カナミッラを立ち上げたこと、そして新しいふたりのシェフについてお聞かせください。

長本:FICTイタリア料理長期研修を卒業した研修生が400人以上になりました。帰国後それぞれが就職したり、オーナーシェフになったりしていますが、経済的な問題も含めて、現実的にイタリアで学んだ事を発揮できる環境を作るのは難しいものがあります。そこでリストランテ カシーナ カナミッラを開店したわけです。まず店という環境を作り、そこを舞台にシェフとしての仕上げをしてもらおうと。
シェフという役職は、ただ技術的に優れているだけではなく、イタリア料理の深遠なる知識と現場での統率力、そして経営能力を必要とするものです。そこで私の知っていることと事務所にあるイタリア料理書から知識を得、久保木支配人からはシェフとしての心構えを学んでほしいと思っています。
小西シェフと岩坪シェフは、志の高さと料理に対する探究心から、選びました。どこまで彼らの力になれるか、私自身も勉強しなくてはと思っています。

--ありがとうございます。では、カシーナ カナミッラの新シェフであるおふたりに、これからのカシーナ カナミッラについて伺います。

ふたりのカナミッラでの抱負

--シェフ就任、おめでとうございます。就任から約1ヵ月が経ちました。お二人が描くリストランテとは、どういったものでしょうか?また、それを具現化するために、カシーナ カナミッラでチャレンジしたいこととは何でしょうか?

小西:僕にとってのリストランテとは、自分を表現する場です。

岩坪:僕は食材を大切にしたい。何を食べているかわからない料理はしたくないと考えています。

小西:そうですね、食材を生かすことは重要です。今、日本には輸入品も含めクオリティの高い食材が多くあります。これらをうまく活用して、イタリアンという世界から脱線しないように料理をしていきたいですね。

岩坪:また、僕たちはせっかくこのカシーナ カナミッラに来たので、代表である長本さんからも得ることが多くあります。長本さんから郷土料理の基本を学びつつ、それをさらにリストランテらしい、僕たちらしい料理に昇華させていくことがこれからの大きなテーマだと思っています。

--おふたりともFICT研修では北イタリアで研修されました。やはり、メニューも北イタリアの料理が多くなりそうですか?

小西:今、季節的に北イタリアの料理が多いですが、温かくなれば南イタリアの料理もオンメニューしたい。残念ながら僕自身は南イタリアにはいったことがありません。でも、ここには、実際に南イタリアで修行した岩坪さんも長本さんという先生もいるので、色々参考にさせていただきながらチャレンジしていきたいと思います。

岩坪:今現在、南イタリア料理もオンメニューしています。季節や食材に合わせてベストなレシピを考えていきたいので、特に北イタリアとか南イタリアとかに断定していくつもりはありません。実際にカナミッラのホールは、陽が注ぎ込む明るい雰囲気。それにふさわしい料理を作っていきたいですね。

--2TOPということですが、ふたりの役割分担とはどのようになっていますか?

岩坪:メニュー構成は、ふたりのアイディアラッシュから始まります。お互いが案をだし、ふたりで試作、修正を加えながら作り上げていくのです。調理の現場では、仕事が円滑に回るように、今のところ、僕がプリモピアット、小西さんがアンティパストとセコンドピアットを担当、ドルチェはふたりで、というふうに分担しています。

小西:これから僕たちらしい料理をドンドン作っていきたいと思っています。今は、1月のメニューを考えていますが、こちらも乞うご期待です!その中でも、トラディッショナルな味の中に新しい感覚をお楽しみいただける『野鴨のロースト』がお勧めです。旬のジビエ、野鴨をローストしました。スパイスの香り、ナッツの食感、レモンのコンフィの苦みと甘味。そこにクラシックで濃厚なソースをかけます。

岩坪:僕のおすすめは『アンコウの低温コンフィ』です。しっとりと火を入れたアンコウの柔らかくもプリッとした食感とアン肝の旨味、春菊の海藻にも似た香りとアンコウのスーゴを乳化させたソースが味に広がりを持たせます。冬ならではの味覚を楽しんでいただけると思います。

アンコウの低温コンフィ アン肝のテリーヌ添え 春菊とアンコウの白いスーゴの2色ソース 野鴨のロースト スパイス香るサッビアータ

FICT研修で感じたこと

--では、ここからは、FICTの研修時代について伺いたいと思います。おふたりとも研修先は北イタリアと聞いていますが?

岩坪:僕はピエモンテ州の『フリポー』。

小西:僕はマルケ州の『ジャルディーノ』。僕は日本ではイタリアンで働いたことがなく、イタリアを全く知らない状態でFICT研修に入りました。研修で初めてイタリアへ行き、すべて初めての体験ばかり。とても勉強になりました。
当初、僕のマルケのイメージは海だったのですが、研修先の『ジャルディーノ』は山の中。魚料理ではなく、肉と豆が中心のメニュー構成に驚きました。また、カトリックの影響が料理にあるということも、この研修先で知りました。『ジャルディーノ』は、おばあちゃんシェフが中心のリストランテ。彼女の意向で金曜日は絶対に肉料理を提供しない、魚、といってもバッカラや豆料理が中心のメニューになります。言葉も料理もわからない中でも感じることはたくさんありました。

岩坪:僕の研修先も山を越えればフランスという田舎。その生活の中で、この地の人々は地元が好きでたまらない、ということを強く感じました。土地、地元を大切にする、地元気質、地元を誇りに思っていることに驚かされました。また、僕は東京生まれなので、このピエモンテで生まれて初めて田舎生活を体験しました。関心すること、驚くことの連続!オーダーが入っていから、庭に咲いているハーブをとってきて料理に使用する、いったことにでも「イタリアに来たんだ!」という実感になったりして。休憩時間に山へ行き、チーズやハーブなどを取りに行ったりとういうことも楽しい体験でした。

岩坪シェフの研修先、フリポーの厨房とホール

--研修に入るにあたり、イタリア語はどの程度、話せた方がよいと思いますか?

小西:もちろん、できるにこしたことはない。FICT研修では、日常会話はもちろんですが、調理場の言葉を知っておくことが大切ですね。

岩坪:料理人として研修に行くのですから最低限、食材と調理器具の名前は覚えていたったほうがよいと思います。研修先の厨房で正確なイタリア語が話せなくても、食材名、調理器具名でだいだいのことがわかるからです。

--クリスマスの後など、リストランテが休業に入るときはどのように過ごされていましたか?

小西:『ジャルディーノ』では、クリスマスが終わってから2月中旬まで休みでしたので、その間、トレンティーノのリストランテを紹介していただき研修を続けました。スキーヤーなどもいる土地でマルケとは違う勉強ができました。

岩坪:僕も他の店で研修していました。時間が限られているので、1日でもおしい。この1年間を有効に過ごそうと決めていたので、長い休みの期間も厨房に立っていました。

--やはり強い意志、意欲をもって参加されたのですね!小西さんはエル・ブジでも修業されたと伺っていますが?

小西:はい、FICT研修後もイタリアで勉強を続けていました。その修業先のリストランテにエル・ブジのスーシェフが2週間ほど研修に来ていて、友達になったことがきっかけです。スペインのエル・ブジは当時から有名でなかなか修業できるところではないので、よいチャンスだと! 当初から僕の目的は、イタリアで学び、日本で厨房に立つことでしたら、30歳には日本に帰ろうと思っていました。最後の修業先がこのエル・ブジとなりました。

これからFICT研修に参加する人へ

--今、ict食文化企画では、来年、2010年4月出発のFICTイタリア料理長期研修第25期生を募集しています。これからFICTの研修に行く皆さんにメッセージをお願いします。

岩坪:これから研修に行かれる皆さんにはイタリアでの生活や人間関係を楽しんでもらいたい、と思います。料理だけ勉強しようと思うとつまらないものになってしまうと思うからです。料理だけ勉強しようとしても意外に勉強できなかったりする。というのも、その勉強には、厨房のスタッフとのコミュニケーションが大切だからです。積極的に職場のスタッフと友達になれたほうが勉強にも近道です。
あまり、殻にこもらず、否定的にならず、イタリアそのものを受け入れるようにしたほうがよいと思います。実際に厨房に入るとわかりますが、すべてのイタリア人が丁寧な料理をするわけではないので、たまに雑な場面を見てもがっかりしないでほしいですね。

小西:僕もそう思います。技術的に日本人シェフのほうがスキルがあることもある。でも、イタリアにいったら、日本人、イタリア人云々ではなく、イタリアのすべて受け入れた方がよい。
すべて受け入れてやってみて、日本に帰ってから整理して考えていけばよいのです。はじめからネガティブな面ばかりを気にしない方がよいですね。受け入れる姿勢の方が結果的に得。その中から見えてくるものもあるはずです。せっかく行ったのだから思いっきり楽しむべきだと思います。

岩坪:それから、意見ははっきりといったほうがよい。遠慮はいらないですね。

小西:そう、僕は研修終了後もイタリアに滞在しましたが、やはり、イタリアの生活では、自己主張は大切。交渉、意見をいうことは重要だと思います。

岩坪:FICT研修は料理人としてイタリアで勉強する最初の入り口。イタリアに行き、努力していけば人とのつながりはできていくものです。そのきっかけを作ってくれた、まさにイタリアの第一歩がFICT研修でした。

--ありがとうございました。お二人のこれからの活躍を楽しみにしています!
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ict食文化企画有限会社
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