第60回 中目黒 カシーナ・カナミッラ 佐藤シェフ
テーマ「佐藤護シェフの四季を謳う トレンティーノ-アルト・アディジェ」
平成21年1月29日


 大人気のアンナ・ゴゼッティ・デッラ・サルダ著「イタリア郷土料理集」に佐藤護シェフが挑むシリーズ。2009年の幕開けに10州目としてテーマに挙がったのが北イタリア『トレンティーノ-アルト・アディジェ』。
 ドロミテ山脈が有名なこの州は、オーストリアとの国境を有する北部のアルト・アディジェと、ヴェネト州に接する南部のトレンティーノに大きく2分され、それぞれに違った魅力を有します。佐藤シェフは、南チロル地方とも呼ばれるアルト・アディジェ地方にて1年半の修行時代を過ごした経験の持ち主ですが、特に学んだのは肉料理の魅力についてだったそう。季節ごとに様々な動物の肉が手に入り、『肉の旬』を体感したそうです。そんなシェフが郷土料理集のリチェッタをもとに、一つ一つのクラシックな料理の魅力を引きたてる様々なマジックをあちこちに仕込んでいてくれました。
 突き出しのコールラビのソッフォカート。コールラビの甘さをより引き立てるために添えられたのは、自家製のキャベツの酢漬け『クラウティ』。冬の寒さが厳しいこの地方では、新鮮な野菜を採ることは至難のわざ。そこで旬の時期に長期保存できるように加工し、長い冬に備えるのです。
 またアンティパストの自家製プロシュットコットの一皿に添えられた『サルサ・ボルツァニーナ』は、通常白アスパラの料理に添えるゆで卵とヴィネガー・オイルで調味をしたソース。美しく彩られたワカサギのマリネの皿とともに、一足先に春の気分を感じる前菜でした。
 プリモには、古くなったパンで作るニョッキ『カネーデルリ』。寒い地方らしくずっしりとお腹にたまるこの料理には、生地に野菜の緑をプラス、中にはブルーチーズを忍ばせるといった工夫がこらされ、また添えられたカブと全く同じに一つ一つの大きさを整えるという懲りよう。乳製品のコクが効いたやさしい味わいの大麦のマンテカートには、香ばしく調味された鶏レバーを合わせお互いの魅力をさらに引き立てあっていました。
 ドルチェは3種類。りんごの名産地らしい輪切りにしたりんごのフリットや、オーストリアの影響を感じ取れる焼き菓子ストゥルーデル、ナッツやドライフルーツをふんだんに加えたツェルテンなど、他の地方のイタリア菓子とはまた違った、この地方ならではの菓子のおもしろさを魅せてくれました。
 寒さ厳しい冬の地方料理の魅力を味わうには、まさにうってつけだった1月という時期を選んだのも長本さんと佐藤シェフのアイデアからだったのでしょうか。なかなか日本ではお目にかかれない数々の地方料理の魅力を学ぶ、めったにない機会であるこのお食事会。またそんな郷土料理を、佐藤シェフがどんなマジックで驚かしてくれるのか。次回への期待が更に高まる素晴らしい会でした。

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