ダル・マット
Dal matto
ダル・マットグループ オーナー 平井 正人


平井 正人シェフ プロフィール
1973年11月生まれ 静岡県出身
群馬県のイタリア料理店で働いたことをきっかけに、イタリア料理の道に進むことを決意。長本和子が同行したイタリア料理研修に参加し、リグーリア、エミリア・ロマーニャ州などでリストランテの研修。帰国前には食事をしてみて最も気に入ったトスカーナ州の有名店ガンベロ・ロッソでも修行を積む。在イタリア時に日本から持っていた料理本に出ていた落合シェフ (ラ・ベットラ) の料理が目に留まり、イタリアからの就職希望レターを出す。ラ・ベットラ開店と同時に上京し、約3年ベットラで落合シェフの元で腕を磨く。その後クラッティーニを経てダル・マットを開業。


‐ スプマンテのフェッラーリを日本一消費するお店になられたそうですね。
平井 はい、そうなんです。西麻布本店、恵比寿店ともに表彰していただき、副賞でイタリア旅行がつくのですが、2店舗ともまだイタリアに行ったことのない従業員の子に行ってもらう予定です。

‐ 「ダル・マット」といえば、やはり「ワイン飲み放題」についてお聞きしたいのですが。イタリア料理店として、抵抗や赤字の不安などはありませんでしたか。
平井 ワイン飲み放題のアイディアは、イタリアにいた頃から持っていたものです。フィレンツェにある大好きな2つのお店「ヴェッキア・ベットラ」「イル・ラティーニ」では、テーブルに置かれているボトルのワインを定額で飲み放題にしているんですよ。それを日本でやりたいとずっと考えていました。ただ、ボトルではロスが出すぎてしまうので、デカンタでお出しすることにしました。たくさんお飲みになるお客様とそうでないお客様がどれくらいの割合で来られるか、1日でどれくらい消費するか、2日目は、3日目は、という具合にシュミレーションして、現在の価格 (1500円/1人) を決めました。量で考えると平均2人でマグナム約1本という計算です。現在では、マグナム瓶5600本をコンテナーごと買っているので、仕入れ値が抑えられますし、その分食材が更にグレードアップできるというメリットがあります。

‐ 客層はどんな方々が中心ですか。
平井 30代女性、友人同士のお食事が多いです。西麻布でお店を開業するに当たり、この近辺で女性が自分でお金を払って食事に行きたくなるような価格帯にしたいと決めていました。ワイン代もすべて込みで8,000〜9,000円くらいであれば、何度もリピートしてもらえるのでは、と考えたからです。
おまかせ定額コース (5.000円で7皿) にしたことにより、会社の部会などの会合で幹事さんがお金を集めやすいという利点があります。ワインも定額制ですから、予め会費を集金できたり、食後のわずらわしい割り勘の計算が省けますし。

‐ 世の中の不況をよそに、連日賑わっているダル・マットですが、どのような宣伝活動をされているのですか。
平井 メルマガなども配信していますが、それよりも一番効果が大きいのは口コミ宣伝です。お客様が食事を終えられた頃に各テーブルを回って、ご挨拶をしつつ感想をお聞きしたりするんです。「美味しかった」「満足した」とおっしゃっていただいた際に「そうしましたら、是非お友達3人にダル・マットのことを紹介してください」と言っています。ストレートに友達に紹介してくれ、なんていうお店あまりありませんよね (笑)。ただ、そこでウチを紹介してくれと言うだけではなく、僕自身が個人的に気に入っているお店も教えたりするんですよ。そうすると、お客様が僕の紹介した別のお店に行ったときに「平井さんから教えていただいて」と話のネタになったり、さらに「先日、教えてもらったお店に行ってきたんですよ」と報告するために再度ご来店くださるということが少なくないんです。
最近はブログなどで色々なお店を紹介しているお客様も多数いるようですが、そういう方たちは、ブログに新しいお店を次々と掲載しているので新店舗の開拓に忙しくなかなかリピートしてくれません。そこで、先ほどのようなお店情報交換のやりとりをすることにより「先日教えていただいたお店、ブログに載せましたよ」と報告に来てくださるという嬉しいリピート来店につながるというわけです。特にテーブルでお料理の写真を撮られているお客様などは、食べることに興味をお持ちの方が多いですから「好きなお店を共有」できるような情報交換や話題づくりで、ダル・マットの口コミ宣伝効果が上がっていると思います。

‐ 5,000円で食材にこだわった7皿お出しするのはなかなか大変なのではと思われますが。
平井 当店で使っている食材は、いわゆる有名ブランド食材が大半を占めています。ブランド牛、浅野ファームさんの野菜、魚は全て天然モノです。ダル・マットを開店するに当たり、スタッフを集めることと同時に開始したのが食材集めでした。もちろん業者さんを仲介してではなく、生産者さんを訪ねて直接やりとりしてです。
いい食材を使いたくても、少量では仕入れ値が高くなりすぎますから、まとめてたくさん仕入れることにより高級な食材を安価で使えるわけです。現在は3店舗ありますから、それが実現できます。また、生産者さんには必ず「食材をどんな料理でお出ししたか」を報告しています。そこでコミュニケーションを図ることにより、業者さんとのやり取りが円滑になりますし、生産者さんが他のお店の方に「ダル・マットさんではこんな料理にしてお出ししているらしいよ」と話題にしてくれるという効果もあります。逆に生産者さんから「どこどこのお店では、こんな料理にしてお出ししているようですよ」と教えていただいたりして、それがヒントになって生まれた料理もありますから。低価格で良質の食材をお出しするためには、生産者さんとの交渉、そしてコミュニケーションは欠かすことの出来ない最も重要な僕の役目ですね。

‐ 複数ある店舗のスタッフの皆さんに心がけて欲しいと思っていることはありますか。
平井 よく話すことは「お客様が来てくださることは、当たり前ではない」ということです。だから、仕事は真面目に取り組むこと、あとはちゃらんぽらんでもいいから (笑)。
僕の場合、料理の作り方や詳しい指示はセンコンド・シェフにしか出しません。セコンド・シェフが他のスタッフを取りまとめて作業を進めていきます。僕からは1週間分のメニュー・メモを渡し、それを作るためにセコンドは指示を出します。僕の渡したメモを忠実に再現した料理が出来てくることはもちろんですが、「こんな風にアレンジしてみました」と言われることも多々あります。僕はお店のスタッフ全員がシェフであって欲しいと考えていますから、それが美味しければもちろんそのままお出しします。

‐ 最後に、これからイタリアへ研修に参加したいと思っている方、そしてこれから自分のお店を持ちたいと考えている方にアドバイスをお願いします。
平井 イタリアに行かれる方は、とにかく楽しんできてください。そのためには、イタリア人と同じ生活をしてみることが大切だと思います。イタリアの若者は週末にクラブやディスコに集って友人との交流を夜遅くまで楽しみますが、日本ではそういった場所に無縁の生活をしていたとしても、イタリアに行ったら是非イタリア人の友人をつくってそんな週末を楽しんでみてください。もうひとつ、イタリアではどこで何を食べたいのか、見たいのかくらいは行く前によく調べておいた方がいいですね。僕が研修でイタリアに行ったときには、全く何も調べずにイタリアへ渡ってしまった経験がありますので、準備するとしないでは行ってからの吸収率が全く違うと思います。
これから開業したいと考えている方には、まずどんなお店をやりたいのか明確なコンセプトを持つこと。軸となるしっかりとした考えを持つことが大切だと思います。僕が考えるいいお店とは、儲かった分は出来る限りお客様に料理として還元するお店だということ。商売ですから利益を出して黒字にしなければいけないことは当たり前ですが、黒字を増やしすぎてはいけないと思います。お客様は賢いですから、儲けすぎているお店の料理はすぐに見抜かれてしまいます。手厚いサービスや料理が一番重要という考え方もありますが、それらはよくて当たり前、そこばかり追求すると自己満足の世界に入りがちだと思っています。

‐ 本日はありがとうございました。

平井シェフのお話からわかったこと、それは「不況下でも客足の途絶えないお店」のからくりなど存在しないということです。
真摯にお客様のことを考え、いい食材をいかに安くお出しできるかを追求した結果、今のダル・マット・スタイルに行き着いたということ。お客様や生産者の方との交流を大切にし、儲かった分は出来る限りお料理としてお客様に還元する。当たり前のことのようですが、今の厳しい経済情勢にも負けない体力を持ったお店の秘訣はそこにありました。


Domanda e risposta
■思い出のイタリア料理の一皿は?
落合シェフのアッラビアータです。
■最近お気に入りのお店は?
カッシーナ・カナミッラ (この取材依頼がある以前から気に入っていました!平井氏談)
■ストレス解消方は?
若手の子達や友人とお酒を飲むことですね。若い子達からは恋愛話とかよく聞かされるんですよ(笑)。ただ、深酒して楽しむのは翌日が定休日の日曜の夜くらいです。そのときはシャンパンを飲みます。通常は営業が早く終わったとしても行きつけのBARでジン・リッキーを2杯飲んで帰宅します。
平井シェフとの出会い 長本和子

開店数年にして、3店舗の経営者になった平井正人シェフ。初めて会った時は以前イタリアのICTがやっていた研修に参加してきたのが最初でした。大学を出てからまだ間もなく、口下手で、不器用で、そのくせ隠された情熱は人一倍という印象。驚いたのは、イタリアにいる間に日本の有名シェフに手紙を書き、帰国後の就職をお願いしたという積極性でした。唯一返事をいただいたのが落合シェフで、そのまま就職することになったそうです。何年かしてテレビ番組でクラッティーニの倉谷シェフのアシストをしていた時に、その仕事ぶりにびっくりしてしまいました。気の使い方といい、タイミングの良さといい、まさにプロの料理人でした。「人は化けるから、だから料理人との付き合いは面白い」とつくづく思ったものです。
西麻布 DAL MATTO 港区西麻布1-10-8 B1F
TEL:03-3470-9899
恵比寿 DAL MATTO 渋谷区恵比寿2-7-8
TEL:03-3780-9955
DAL MATTO OGGI 港区西麻布1-10-8 1F
TEL:03-6406-0771
URL hhttp://www.dal-matto.com/ (3店舗共通)
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