番外 トスカーナ その2

 8月8日、今日はキャンティークラッシコエリアを回る最終日。午前中はまず、昨日最後に予約していた「イーゾレ エ オレナ」。きれいに整頓された、見た目にも美しいカンティーナ。施設を作って間もないんだろうが、それにしても清潔に保たれている。バリック熟成庫の入り口には、ガレストロの巨大な石がライトアップされている。そしてステンレスタンクの奥には、アヴィニョネジで見たあの木の発酵タンクが!名前は「フードゥレ(Foudres)」というそうだ。そうこれフランス語。今後広がっていく技術かもしれない。
 もっともっと見たいのだが、なにせ時間がない。試飲させてもらったのは、まずキャンティークラッシコ 00。何だ!このキャンティー、やたら美味い!若干シラーをブレンドしていて、スパイスの要素があり、さらに十分に熟した果実の香りに若いチェリーのような香りも混ざる。味わいは、飲みやすく完熟したタンニン、滑らかさがあり、さらにサンジョヴェーゼらしい繊細でスッとした酸味もちゃんと持っている。色々な要素を持っていながら、ちゃんとバランスが取れている。このワイン、いくら?なんと、エノテカ価格14ユーロ!素晴らしいの一言。次は、「シラー コッレツィオーネ デ マルキ 99(Syrah Collezione de Marchi)」。樹齢が上がってきていて凝縮した果実味とスパイシーな印象が特徴。オーストラリアのシラーズとは違い、フランスのローヌのエルミタージュやコートロティーに近い雰囲気だ。お待ちかねの「チェッパレッロ 99(Cepparello)」。サンジョヴェーゼ100%のスーパータスカン。このワインに言葉は要らない!一言だけいえば、サンジョヴェーゼというブドウの特徴を最大限生かしながら、現代的なワインに仕上げているということだろうか。
 
 正直に、今回の旅で一番気に入ったのはここのカンティーナ。少し現代的な要素がワインの中も、カンティーナの中も強い気がするが、ワインの質・良心的な価格・十分に多い生産量など、総合評価では文句のないところ。高いワインが美味しいのは当たり前。ノーマルなキャンティークラッシコの美味しさは、素晴らしかった。2番目以降?それは書いた内容から判断できるでしょ!?
 
 次は、「フォントディー(Fontodi)」に向かった。金の十字のエチケット「フラッチャネッロ デッレ ピエヴェ(Flaccianello delle Pieve)」でおなじみのカンティーナ。やや標高の高い山の稜線上で、キャンティークラッシコエリアのほぼ中心にある。
 まずはカンティーナの中を案内してもらった。ここで一番強調していたのは、ポンプを一切使わないということ。破砕・発酵・熟成・・・、全ては重力の力だけでタンクからタンクへと移しかえられる。ワインにストレスを与えないように勤めているとのことだ。カリフォルニアやオーストラリアではよく聞く話だが、イタリアで聞いたのは初めて。ルモンタージュも鉄の荒い網のようなもので上から果帽を沈める方式だ。
 試飲したのは、キャンティークラッシコ 00。サンジョヴェーゼ100%で、心地のよいラズベリーのような香りが支配的。味わいもサンジョヴェーゼらしい酸味があり、柔らかな舌触りでタンニンもまろやか。チャーミングなワインだ。次はフラッチャネッロ 99。まだまだ香りが閉じていて、やや酸味が勝り少し時間が必要だ。エレガントで、かつ、しっかりしたボディーは今後の成長を期待させる。
 
 午後は、「ヴェッキエ テッレ ディ モンテフィリ(Vecchie Terre di Montefili)」を予約していた。フォントディーよりもさらに標高の高いところにある。しかし、畑は日当たりのよい南向き斜面ばかりで、やや窪んだ地形の所にあるため風の通り道にあたり、暖かく乾燥したミクロクリマになるとのこと。このカンティーナで一番感じたことは、オーナーやエノロゴなど、スタッフの人柄の良さがワインによく現れていということ。案内してくれたエノロゴ(すいません。名前忘れちゃった。)は、表情に優しさがにじみ出ていて、好印象。カンティーナや瓶詰め施設を案内してもらっている最中も、従業員の人たちは気持ちよく挨拶してくれてうれしかった。小規模ながらも素晴らしいワインを造っている理由が分かった気がした。
 
 試飲したのは、「ヴィニャ レイス 00(Vigna Reys)」、白から。シャルドネ80%にソーヴィニョン15%、ゲヴルツトラミネールを5%混ぜてある。5%でもゲヴルツの個性は際立ち、トロピカルなフルーツの印象で、味わいは爽やかな辛口、これがしっかりバランスの取れた素晴らしいワインだった。だいぶ日本に輸出しているらしい。次は、「アンフィテアトロ 99(Anfiteatro)」。サンジョヴェーゼ100%のスーパータスカン!99年はビッグヴィンテージで、どのワインを飲んでも若すぎる。まだまだバランスに欠け、樽香やタンニンが際立ってしまうことが多い。これもやや樽香が目立つものの、完熟した果実の雰囲気をもちとても滑らか。今後が楽しみな1本。さらに「ブルーノ ロッカ 99(Bruno Rocca)」。カベルネソーヴィニョン60%・サンジョヴェーゼ40%。こちらも99年で、飲むには早すぎる。しかし、両方のブドウの個性がしっかり生かされていて、カベルネからは果実味とボディー、サンジョヴェーゼからはエレガントさときれいな酸味を感じる。きめの細かいワイン。全てのワインに共通するのは、何故かホッとしてしまうところ。優しい顔立ちの人を前にして飲んでいるからなのか、ワインの個性なのかは不明だが、こういう要素もワインには必要だなーと思った。だって普段は、飲みながら疲れたくないでしょ。しかし、試飲は疲れる!
 本当はここのカンティーナのことはよく知らなかった。来て初めて素晴らしいところだと分かる。こういう発見がとてもうれしい、この旅。
 8月9日、今日が最終日。キャンティーを離れてモンタルチィーノに向かった。まずは「バンフィ(Banfi)」。モンタルチーノの街から南に下っていった、サンタンジェロ(Sant'Angielo)という街のそばにある。ブルネッロの生産地域としては最南端にあたる。ここはもう工場といった雰囲気。大きな駐車場と巨大な建物。ステンレスの発酵タンクは、普通のカンティーナにあるものと比べ2〜3倍はある。そのタンクがいったいいくつあるのか・・・。
 ここバンフィーには宮島さんという日本人が働いている。イタリア人並にイタリア語を話し、英語も堪能。グラッツィアーノは、彼のイタリア語はペルフェット(完璧)だと言って誉めていた。(また奥さんが美人!)その彼に案内してもらった。
 まずは先程も書いた工場並みの施設を見せてもらった。一つの特徴は、ガヤのようにバリックに使う樫の木を屋外に3年ほどさらし、ワインに余分な木の香りがつかないように工夫しているということだ。聞いてみるとこういうことをしているのは、他にほとんどないとのこと。コスト・場所の問題など、なかなか小さなカンティーナには出来ないことだろうと思う。バリックの数も半端じゃない。バリック庫が何部屋あるんだろうか・・・。ただただ圧倒されるだけで、質問をするのを忘れていた。せっかく日本語で出来るのに!
 
 その後は、広大な敷地を車で案内してもらった。土壌や標高など畑の特性に合わせて、品種を植え分けている。近くにはアルジャーノ(Algiano)やガヤ(Gaja)、カーゼバッセ(Case Basse)の畑もあるが、圧倒的に大きさが違う。どこまでも続いていそうなバンフィの畑。一度車を降りた。色だけを見るともう収穫できそうなほどに色づいているブルネッロの房。食べるともう糖度があがっていて美味しい。それでも収穫は1か月以上は先とのこと。今の時期は種を完熟させることが重要だとの話。実の中の種にも優しい西日を当てて色付ける。そうすることにより出来たワインのタンニンは、しっかりしていても滑らかで、ギスギスしたものにはならないんだそうだ。とっても興味深かった。実際に種を見てみると、日の当たっているところはやや茶色に色付いている。
 試飲したのは、まず「スムス 98(Summus)」、サンジョヴェーゼ・カベルネ・シラーの混醸。それぞれ品種の個性がしっかり感じられ、全体としては完熟した果実とスパイス、しっかりしたタンニンでも滑らか、こういう印象が強い。次に「エクセルスス 98(Excelsus)」、カベルネ・メルローのブレンドで、ボルドータイプ。ものすごい凝縮感で、ヴァニラ・カシスなど次々に香ってくる。素晴らしいの一言。そして、「ブルネッロ ディ モンタルチーノ 97」、伝統的な大樽で熟成させたスタンダードなブルネッロ。焼き栗の香りが特徴でどうやら大樽熟成したために出来る香りらしい。97年という年の可能性を十分に感じさせ、やっぱりタンニンは滑らかだ。「ブルネッロ ディ モンタルチーノ 97 ポッジョ アッレ ムーラ 97(Poggio alle Mura)」、この年より登場したクリュワイン。バリックで熟成していて、ヴァニラやチョコレートの印象もある。まだまだ若すぎるが、10年を経て素晴らしいワインに変わることは間違いない。しっかりしたボディーとタンニン、サンジョヴェーゼらしいエレガントな酸味、申し分ない。残りは白2本。順番はイレギュラーだが、「セレーナ 01(Serana)」、ソーヴィニョン100%の爽やかなワイン。アペリティーヴォやアンティパスト・魚料理に合わせたい、スッキリしたタイプ。最後はデザートワイン、「フロールス 00(Florus)」、モスカデッロ(Moscadello)というモンタルチーノにしかないブドウから造られる。遅摘みのブドウを使い、決して甘すぎず酸味とのバランスの取れた素晴らしい甘口だ。
 
 それぞれのワインについて余り詳しくは書けなかったが、バンフィーらしさというものをしっかり分かることが出来た。しっかり熟したブドウを使って、若くても美味しく飲める、そして熟成にも耐えるワイン。どのタイプのワインも素晴らしい品質だと思う。宮島さん、どうもありがとうございました。
 
 その次は、「ビォンディ サンティ(Biondi Santi)」、モンタルチーノの大御所中の大御所。しかし、モンタルチーノにあるカンティーナは休み。だいぶ離れた街の、カステッロ ディ モンテポー(Castello di Montepo')を訪問した。バンフィーからは3時間くらいかかっただろうか、長い山道を通り過ぎやっと到着したという感じ。カンティーナとして利用しているカステッロとワイン畑以外は何もないところ。よくぞここをブドウ畑にしようと思ったな〜、というくらい山の中。このお城はひときわ目立つ稜線の上にあり、その下のなだらかな斜面に広大なブドウ畑が広がっている。そう、ここから見えるのは山・森・城・畑だけだ。
 
 ここでは「スキディオーネ(Schidione)」というスーパータスカンを中心に、3種類のワインを造っている。サンジョヴェーゼ・カベルネソーヴィニョン・メルローを栽培。かなりの高品質志向だ。スキオディーネのマグナム・ダブルマグナムは金のラベルを手張り、ロウ封、1本1本木箱に入れられ、立派なワインの説明書きが入れられる。10万円ほどと言っていたような・・・。贈答用に使われることが多いようだ。普通のスキオディーネでも、80ユーロほど。日本に入れば2万円近くになるのか・・・。幸い一番安い「サッソアッローロ(Sassoalloro)」は、17ユーロほど。サンジョヴェーゼ100%。これは後に試飲した感想だが、2000のサッソアッローロは、まだ若々しさが残るものの既に飲み頃に入っている。後3年くらいで頂点を迎えそう。2000年は素晴らしい年で凝縮していて、果実味がたっぷり。素直に美味しいと思える1本だ。
 さて、ここでは四駆じゃないととても走れないような斜面にある畑を車で案内してもらった。見ればキャンティークラッシコと同じような白い石がゴロゴロしている。やはり石灰分を多く含んだガレストロと若干の粘土の土壌のようだ。こうして適度な水分バランスを保っている。そしてスリバチ状になった地形がミクロクリマで多くの熱を蓄える。実際の畑は、まだまだ樹齢の若い木が多い。植えたばかりの畑や、これから植えるという畑も。ということは、これからまだまだワインの品質は上がっていくということ。新しい畑ながらこれだけのワインが出来てしまう。イタリアという土地のポテンシャルを感じさせる場所だ。
 
 この夏休みの前半が終わった。カンティーナ自体も夏休みの所が多く、無理をして迎えてくれたところもあった。何よりも、言葉が美味く通じない日本人に対して丁寧に説明してくれ、貴重なワインを試飲させていただいたこと、親切で熱い人たちに感謝したい。
 さて来週からは、ピエモンテからフリウリまでの一人旅。グラッツィアーノは彼女とチュニジアに行くらしい!かわいいんだなこの彼女が。羨ましいけど、きっとこっちの旅の方が素晴らしいにきまってるさ!その内容は10月更新に間に合うかな〜・・・。

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